19歳のわたしは3合炊き炊飯器を「小さい」と感じた。

ランチョンマットの上に空のお茶碗と蛇の箸置きとお箸が一膳置いている 雑記

一人暮らしを始めたのは19歳。

当時は梅田・新神戸・三宮あたりで舞台照明の仕事をしていて、いや、まだ三宮だけだったっけな。当時の実家は神戸市北区にあり、神戸電鉄の終電ではなかなか忙しなく、というか交通費も満足に出なかったので片道500円近い出費も痛いし乗り換えも面倒だしで原付通勤をしていた。

時給700円そこらを貯めて買ったかわいいかわいい水色のホンダジュリオで深夜の有馬街道を熱唱しながら爆走していたのだ。有馬街道を平野からぐんぐんのぼり、トンネルを抜けて水呑の交差点に出た時、雪で路面がツルツルになっていた事は一度や二度ではない。雨の日もカッパ着て走る。転倒して血だらけで仕事したこともある。

原付通勤が本当に嫌になってしまった。一人暮らしをしたくなった理由は他にもあるけど、一番大きいのはこれ。15年経った今でも未だに濡れた路面は自転車でも車でもこわい。

という事で、いろんな現場にアクセスしやすい場所で部屋を借りた。深夜遅くても迷惑にならないし、常識の範囲内でマキシマムザホルモンを歌っても良い。

幸運なことにエアコン・冷蔵庫は残置物で付属していたので、デカいのは洗濯機と、あとはレンジとか炊飯器とかケトルとかの小型家電とベッドとTVとTV台、それぐらいの出費で済んだ。とはいえ貯金が一気に無くなってさすがにビビった記憶がある。今考えるとなんで審査通ったんだろう。

一人暮らしだしとりあえず安いものを、と、小さい3合炊きの炊飯器を買った。

19歳のわたしは3合炊き炊飯器を「小さい」と感じた。

今まで実家の5合炊きにしか触れてこなかったから、おもちゃみたいでかわいいな~と思った。

一人暮らしは楽しかった。自由と責任。勝手に洗濯物が出来上がってる訳じゃなくなった。当時は月400時間ぐらい働いていたわりにお金も無いし時間も無いし、いっぱい笑ったり泣いたりした一人暮らしだった。

で、その「とりあえず」で買った炊飯器を15年くらい使い続けた。いま思えば、最初から5合炊きを買っても良かった。どうせ冷凍ご飯にしてストックするんだし一度に炊ける量は多くても大丈夫だし、釜の容量不足で炊き込みご飯の素がことごとく使えない。ちっちゃくてたまに不便、でも全然使えるし……と使い続けてきたけど、結婚5年目で中古のマンションを買った時にあれもこれも新調する流れに乗って炊飯器も買い替えた。5合炊きだ。

34歳のわたしは5合炊き炊飯器を「大きい」と感じた。

こんなに大きかったっけ。実家にいた時は当たり前のように使ってたから新感覚だ。すごくパワフル。5.5合まで炊ける。炊き込みご飯の素もバッチリ使えるし、玄米モードでさつまいもを炊くとしっとりした蒸し芋になる。

この引っ越しを機に、色んなものを買い替えた。家を買うまでは夫と私のお互いが一人暮らしの時に使っていた家具家電をそのままハイブリッドさせてなんともチグハグなインテリアだったから、やっと自分たちの城が出来上がったのだ。

長い長い一人暮らしが終わって、ちょっと大人になった気がした。

 

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