夢を叶えて好きなことを仕事にしたけど結局辞めた話

仕事

中学生の時、三宮駅前のパイ山ではインディーズバンドのストリートライブが全盛期だった。

パイ山の東西南北に1バンドずつスタンバイして、2~3曲ごとに交代しながら音を出す。

一番最初に行ったきっかけは、確かうちの姉に誘われて一緒に見に行ったんだっけ。
もう記憶がかなり曖昧なんだけど、とにかくそのバンドを見に行ったら、CD以外の生音で大きな音が出て、ギターがギャイーンで、他のバンドもかっこいいじゃん!あれもかっこいい!こんな所でこんな楽しいことが行われているのか!といった感じにハマってしまって。
なんといってもストリートライブは無料だし。
ファン同士で仲良くなったりも楽しかった。

(ちなみに当時好きだったバンド名で検索かけるとファンブログに辿り着くが、私が15歳ぐらいの時に書いていたブログも出てくる。心臓が痛い。血圧上がるわ)

初めてライブハウスに行ったのもたしかそのバンドかな。ええっと確かそう。場所は神戸STAR CLUB。。。が、、あれ、大阪MUSEだったかも。。福島2ndLine……ではないか。神戸アーバンスクエアかも?懐かしい!まあ覚えてないな

とにかく、お小遣い握りしめて開いたドアの向こうは、大変楽しいところだった訳で。

「かあちゃん、あたい、ライブハウスで働く!バンドの仕事する!」と意気込んだ私は、その数年後にライブハウスで働いておりました。
受付でのチケットもぎりから、ドリンクカウンターでお酒を出したり、照明を教えてもらったり。
あの時通いまくった小屋でも働いた。あの頃はなんか朝から晩まで(というか昼から朝方まで)ずっと働いてた気がする。

その後は神戸と大阪のライブハウスを行ったり来たり、時にはホテルの宴会場、時にはホール、時には野外へと、また朝から晩まで働いて、照明の仕事だけで食べていけるようになっていた。

バンドツアーに同行して色んなライブハウスで照明したり、下積みだし、と思ってノーギャラで色んな現場に顔を出して次に呼んでもらえるようになったり、失敗したり、飲み過ぎたり、怪我したり、月400時間働いたり、打ち上げだけ顔出したり、飲みに行ったり、あれ、飲んでばっかだな

照明の仕事をやるようになってから、ライブも舞台も以前のように純粋に楽しめなくなってしまった。
どうしても演出や照明に目が行く。色んな人の照明を参考にして、真似しまくってたなー。

そしていつしか転職を考えるようになっていた。

理由はいろいろあるけど、一番の理由は将来。というかまあまあ近い将来。

照明の仕事は現場によってマチマチだけど、ホール現場なんかだと始発で出たり時には前乗りしたり。
そして終電で帰ってきたり帰らなかったりする。
ライブハウスでもまあお昼前ぐらいに出勤して、なんだかんだ23時とか24時ぐらいに帰る。
楽な現場は4時間ぐらいしか働いてなかったりもするけどね。

そして家でも仕事をする。
これはほとんどライブハウスの仕事で、演者から送られてくる音源を譜割りして、明かりを考える。
なかなか苦手な作業で、1公演およそ2時間分の音源をまとめるのに4時間ぐらいかかる。ノーギャラだぜ?
でもこれしないとばっちりキメられない。キマったらテンション上がるしな。
演者もその方がええでしょ?だからって音源を前日夜とかに送ってくるのやめろ?聴くけどさ?

この生活を、30歳40歳で続けていける気がしなかった。
もちろん続けている人もいるし、バリバリやりながらお子さんを育てているスーパーウーマンだっている。
でも自分は無理だと悟った。基本的に体力仕事だもん。右手と左手に5kgずつ持って肩にケーブルかけて走るとかザラだもん。
あと不規則にも程がある。ホールだけ、ホテルだけ、ライブハウスだけ、みたいにある程度絞ってたらまだマシだったかもしれないけど、全部行ってたから生活リズムが狂いまくっていた。

9時17時の仕事をやりたいと思うようになった。

それでもやっぱり楽しくて、興奮して、緊張して、鳥肌の立つ仕事の魅力に浸かって、なかなか抜け出せないでいた。
照明ひとつとっても色んな現場があるけど、その中でもやっぱり、ライブハウスが好きで。
毎日毎日良いイベントな訳じゃない。自分の好みじゃないジャンルだってある。お客さんが全然入らない日もある。それでもやっぱり、良いモノに触れた時は感動する。

そんなある時、当時メインで入っていた小屋でザ・クロマニヨンズの公演があった。2daysだった。
そこで照明を担当した。(プランはツアーチームだから私はただのオペレーター)

2日間ずっと、緊張しすぎてちょっと浮いてた。
卓のガリが出ないように祈った(ちょっと出た)
手汗が止まらなかった。夢のような時間だった。

終わったとき、
(あ、これが興奮のピークだ。辞めよう。)と思った。
これを超える体験が、この先しばらく無いように感じた。いや、絶対あるんだけど、なんか区切りの良さがあった。

その時がたしか25歳ぐらい。
フリーランスなのかフリーターなのかという状態から異業種正社員への転職活動、時間の猶予も無いと思って少々駆け足気味に転職した。
どこもかしこも人手不足、急に「転職します」「内定決まったんで辞めます」とか言っちゃって、散々お世話になっておいてそりゃないよなー。

その後、さらにもう1度の転職を経て、現在は町工場のパソコンの前に落ち着いている。
ほぼ一日中デスクに座って、CADやらCAMやらなんだかテクニカルな知識を詰め込んでいる。

今の仕事には、あの頃あった興奮も心揺さぶられることも無い。
特に今は工業製品を作ってるから、仕事が終わった時の「目に見えるやりがい部分」が少ない。
どこにモチベーションを持っていくかはまだまだ課題だ。

でも、これがいい。

規則的な生活で、デスクワークで、平凡な結婚生活を送っている。

人生で初めて「朝いつもの時間に勝手に目覚める」を体験している。
前まで日によって入り時間バラバラだったから、アラームが無いと何時まででも寝てたのよね。
あと手取りがめちゃくちゃ増えた。フリーで400時間働いてる時より貰ってる。やったぜ。

転職したては単発で現場行くこともあったけど(副業okだし)
今はもう全然行かなくなった。多分現場では使い物にならないだろうな。
結局ムービングには疎いままだったから、もう怖くて行けないや。
かといって古いホールなんかだとチンタラ出来ないしなあ。でもライブハウスは行きたいねえ

以前、「音響・照明してたけど転職した人」の飲み会に呼ばれて顔を出した。
あの時は楽しかったな~とは言うけど、戻りたいな~って言う人はいなかった。うん、しんどいよねw

でもなんか働いてた頃のことを美化したまま覚えてて。
もっと「コンニャロ!!!!」って夜もたくさんあったはずだけど、よっぽどのこと以外は忘れちゃうもんだね。

美化された楽しい楽しい記憶だけはずっと覚えてたいね。せっかく夢叶えたんだから。
大切にしたい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました